4.土壌汚染が進行する- 土壌病害

耕作放棄となる最大の原因は土壌障害である。これが作物に出ると連作障害になる。土壌病害という言葉を知らない生産者は少ないと思う。それでは自分の耕作しているほ場が土壌病害になっているかどうか判断できるかというと、できる生産者はほとんどいない。多くは作物に障害が出てそうかもしれないと考える程度である。視覚では難しいのである。土壌病害になったからといって土に変化があるわけではない。目に見えない土の中の生物性が変化して土壌病害を発生させてしまうのである。土の中の生物性を正確に判断できる計測器は存在しない。土を顕微鏡で見たとしても土壌分析の専門家でもない限り何も分からない。そのために土壌病害に対する対策は常に後手になって遅れる。一方で土壌病害の進行は思っている以上に早い。その結果何も育たなくなり耕作放棄になってしまうのである。「害」の中で一番恐いのは土壌病害と言っても過言ではない。仕事をするインフラを失ってしまうのである。収入を得るすべてを失ってしまうのである。しかも回復にはどれくらいの時間を要するか分からない。現在世界中でこのような農地は拡大の一途である。気候変動だけが原因ではない。人間の無謀な栽培が一番の原因なのである。

土壌病害の原因

土壌病害の原因は土壌の生物性が変化してしまうことが一番大きい。フザリウムという言葉はよく聞くと思う。いわゆる悪玉生物である。フザリウムは総称である。悪玉バクテリアの発生に始まる。それから糸状菌になりカビを発生させる。それをエサにして少しずつ大きな生物が誕生してくる。そしてヨトウ虫やセンチュウなどを発生させる。こうなると土壌病害は重度の状態と言っても良い。土壌病害というのは土壌環境が全体的に悪化して発生するものである。自然の状態で土壌病害が発生する確率は0である。したがって、そのまま10年くらい放置すると土壌病害状態ではなくなる。再び生産活動ができるようになる。ところが無理な栽培をするとすぐに土壌病害は再発をする。10年を経過したとしても病害の痕跡は残っているのである。改善をするのがとても難しいのである。

解決への道すじ

土壌病害の発生で最終的に耕作放棄になるということは、改善の技術がほとんどないということである。誰もやりたがらない仕事ということになる。土壌改良の技術なら一般的に存在する。それでは追いつかないのである。耕作放棄するような土壌病害が出た農地は、単一作物を大面積で栽培しているところに多く見受けられる。費用対効果が見合わないのだと思う。それから考えても解決への道筋は容易なものではない。しかも、このような農地が拡大していることも事実である。解決への道すじは土壌の生物性を大きく変化させることが大切である。土壌改良ではないのである。土壌生物性を大きく変化させるために何をするかである。それを短期間で達成させなくてはいけない。そこが改善技術のキーになるのである。

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